COLUMNコラム

第5回 健康とは何か 中編

さて少し間が空いてしまいましたが、第5回となりました。今回も引き続き健康についてあれこれ考えを巡らせていきましょう。

専門家2人の意見にしばしおつきあいください!

脳科学的にみるとわかる、人が新しい知識を受け入れられないワケ

朱田:さきほどまでの話を脳科学的に見てみるとわかりやすいんですが・・・

人間の脳は大きく分けて、意識や記憶、状況判断などを司る「新皮質」と、本能や喜怒哀楽など 情動にかかわる「旧皮質」、そして呼吸や 心拍のコントロールなど、生命の維持に欠かせない役割を果たしている「古皮質」の三つの層に分ける事ができます。

信念は「旧皮質」で形成されて、新たな知識は「新皮質」で処理されるんですが、脳の優先順位は、新皮質よりも旧皮質という位置付けになっている。だから、いくら新しい知識だけでは、そう簡単には信念を崩せないというワケなんです。

川尻:じゃあ、信念を持ってしまっている患者さんは変えられないんですかね?

朱田:そこはやはり体験して感情を動かしてあげる必要があると思います。うれしさとか驚きとか。

僕の作戦は医療機関の強みとして、とりあえず全部調べあげます。社会保障費とかの問題もあるので全員にはやらないですけど、希望する方にはやります。

例えば、腰と膝が悪いと信じきっている人には、MRIの結果を見せて、構造的な異常がないことを確認してもらいます。その上で、リハビリで体の変化を体感してもらいます。この二つが戦略ですね。

川尻;それ、すごい大事!僕もリハビリで変化を感じてもらうっていうのは、僕絶対条件だと思うんすよね。そこで変化が感じられないと信じてもらえない。だから、ちゃんと変化を実感してもらうのは、非常に重要だと思っています。

身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態とは?

朱田:さっきのWHOの健康の定義の「身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態であり・・」の、「完全に良好な」が難しいですね。良好ってどういう状態だろう?

川尻:そうそう。70代にとっての良好と、20代にとっての良好って全然違うし、

この「良好」っていうのは、何をどう指すのかすごく難しいなって思います。

朱田:例えば、経済的に良好はわかりやすいじゃないですか。精神的な良好もなんとなく想像しやすい。でも、身体的な良好って定義が難しい。

川尻:そうなんですよ。

朱田:身体の能力で考えれば、健康のピークは10代後半〜20代前半ぐらいですか。この年齢をすぎたら、我々の身体は下り坂に入っていく。その変化のスピードを、緩やかな速度に変えることはできるとは思うんですけど。

川尻:それって人間の当たり前の変化じゃないですか。でも、下っていくことを不健康になると捉えるべきなのかな?

朱田: 例えば、すごいパーフェクトな体をしている10代後半から20代前半のアスリートがいるとするじゃないですか。40代〜 50代の僕らからみたら、すごい理想的な肉体を持っているんだけど、本人は「足りない」って思ってるケースもありますよね?

川尻:よくある!!

朱田:この場合は「身体的に良好じゃない」ってことですかね? それとも「精神的に良好じゃない」ってことなのかな。

川尻:そこが凄く難しい。身体的良好と、精神的良好を分けることが難しい。

朱田:WHOの健康っていうのを違った表現で考えてみると、結局良好かどうかというのは、「自分の思いと現実のずれ」、みたいなところになるんじゃないかと思うんですけど・・・

川尻:同感です。現実と予測の差って、結局捉え方に左右されるじゃないですか。

例えば、「こうあるはずだ」と思っていた予測よりも現実が悪いと「俺はだめだ」みたいに捉えがちだし、初めから予測が低ければ、「俺、結構いけてるやん」となる。パーフェクトになろうとしないというのも大事な気がしますけどね。

朱田:人は、毎日体調も違うし、睡眠時間も、食べたものも違う。だから、揺らぐものじゃないですか。

だけど、普段ほとんどの人はそうは思わないわけですよ。ロボットじゃないので、毎日同じ結果、同じ動きにはならないのが普通のことなんですけどね。「完璧であるべきだ」という信念があまりにも強すぎると、対応が難しいんだろうなって気がします。

川尻:それって、教育の過程のなかで、「完璧であることが良いこと」みたいなイメージが植え付けられているからのような気がするんですよね。その結果、常に「体のコンディションは一定であるべき」みたいなイメージを強く持っている人が多い。

そういう意味では今、健康に関する常識が、ガラリと変わる過渡期だと思うんですよね。

我々が、今まで人類として見落としてきたもの、勘違いしてきたものが、ここ10年〜20年で大きく変わってきているのを感じています。

朱田:そうですね。どんな時にそう感じたんですか?

川尻:特に僕がそれを感じたのは、患者さんの痛みの治療を通して本質を理解をし始めたときです。まあ〜〜〜、今まで学校で習ってきたことと違うワケですよ。世間一般で思われてる痛みの解釈と、まあ〜〜〜〜違う。こういう齟齬が生じるのは、何か大きな変化が起きてるときなんですよね。今、過渡期だなと理解しています。

今回はここまで。引き続き後編をお楽しみに!!!

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